旨味が凝縮された天然の地蛤です。
小さな頃は海へ遊びに行くと、裸足の足でグリグリと砂浜の砂を掘り、宝探しをするかのように夢中になって蛤を探 したものです。今ではこの純国産の蛤も、全国での漁獲量が激減し、大変貴重で高価な貝となってしまいました。当館ではこのとても貴重な地蛤を、最も美味しい食べ方の「吸い物」としてお出ししております。なぜ吸い物が最も美味しい食べ方かと言うと、蛤の美味しさは身ではなく体液に旨味が凝縮されているからです。この旨味たっぷりのエキスを逃さず味わえるのがこの吸い物なのです。天然の地蛤の美味しさは格別です。
地蛤(ジハマ)とは、純国産の蛤のこと言います。
ハマグリ(蛤)
マルスダレガ イ目マルスダレガイ科ハマグリ属に分類される二枚貝の一種。分布域は本来、東北地方以南から九州までの内湾、河口付近の浅海域の砂泥底に生息していまし が、水質汚染の影響を受けやすい貝のため、埋め立て工事などによる浅海域の破壊により、昭和後期から急激に減少し始め、現在では、瀬戸内海西部周防灘の一 部、有明海の一部と局地的にしか生息しておらず、ほとんどの産地で絶滅状態となってしまいました。今ではみなさんが手にするほとんどの蛤が輸入されてきた 外国産の蛤です。ここ房総で獲れる蛤は朝鮮蛤という種になり(名は朝鮮と付いておりますが、れっきとした国産の蛤です。)成貝の生態は、外洋に面した高塩 分域の海底より10cmほどの砂中に潜り、砂中より水管を伸ばし呼吸し、餌は珪藻類、植物プランクトン、海底の有機懸濁物などを食べ生きています。成長は、1年で2㎝、2年で4㎝、5年で6㎝前後、最大で10cmにもなることもあります。また、蛤の貝殻の模様は、帯状の線が入っているもの、格子模様のも の、褐色、灰色などと見ていて飽きないほど様々な模様の貝殻があります。蛤は生食では食べてはいけない貝でもあり、アノイリナーゼと言われるビタミンB1 を壊す酵素を持ち、この酵素は加熱することにより効果がなくなります。また、蛤は日本を代表する貝でもあり、縄文時代の遺跡から出土する80%の貝が蛤と古くから好んで食べられてきました。このように蛤は古来より日本人と深く関わりがあり、源氏物語に出てくるように「貝合せ」という遊びにも使われたり、ひなり祭には蛤を食べる風習があります。これは蛤の貝殻は元の組合せ以外の殻としかかみ合わないことから、現代の神経衰弱としての遊び、良き伴侶と出会える ようにと願掛けなどで用いられてきました。蛤の名の由来は、浜辺に生息し栗と形がよく似ているところから「浜栗」と呼ばれたようです。