山茶花は観るものに安らぎを与えるためこの季節をじっと待ち侘びていました。
季節を感じ心を和ませるようにと設けられた山茶花の垣根。ちらほらと色付く紅葉を観ながら内浦山の深い山間へ入り込む、するとそこに現れるのは他とは違う佇まいをした総檜造りの館。その館を見つけ早々に辿り着こうとさらに 深くへ立ち入ると、そこには左から右へと一直線に続く内浦の山々に同化するかのような濃い緑色をした草木の囲い。部屋の前にある小さな庭の端から館の入り口へと続く山茶花の垣根である。ようやく咲くことのできた赤々と色付く山茶花はここぞとばかりに美しく咲き乱れ、優しい香りを辺りに漂わせ和ませている。 垣根に点々と続く花の色は葉の色と見事に調和し極めて美麗であり観るものを元気にしてみせる。季節の移り変わりを当たり前のことのように美しく雅やかに感 じさせる花々は、なんとも不思議な生き物である。
サザンカ(山 茶花、学名:Camellia sasanqua)
ツバキ科。日本原産の常緑広葉樹で本来は長崎県壱岐を北限とし、南は南西諸島(屋久島、西表島)から九州中南部、四国南部までに自生し、現在では多くの園芸品種が誕生し秋田以西の地域でも見られるようになりました。ツバキ科は通常、熱帯から亜熱帯(台湾、中国、インドネシア)に自生する植物でありながら、ツバキやサザンカは温帯にも自生することのできる貴重な珍しい種であります。(自生地では日本が最北限。)開花期は10月~2月と晩秋から冬にかけての長い期間楽しめる花であり花の少ない季節に咲く花であります。花の色は自生種が白色(淡い桃色交じり)をし、園芸品種は野生の形質を持つサザンカ群と遅咲きで多弁の花を持つカンツバキ群に大きく分けられ、白、赤、桃など多種多様なものがあり一重咲 きの品種もあります。自生種の花径は4~8㎝ほどになり花弁は5~6枚で細く基部がはなれ平らに咲きます。花からはほのかに甘くとてもよい香りが漂います。樹高の高さは最大で12mほど。よく似ているツバキとの違いは花形、雄しべの形などでは分かり難い品種があるので、子房、若枝、葉柄にある毛がサザンカの決め手です。(寒さに向って咲く花だから毛に覆われているとか。)サザンカの名の由来には、和名の山茶花(さんさか)が変化し訛ったという説と、中国 語でツバキ類を指す山茶花を取り違えて定着したという両説があります。この他別名もあり、岩花火、藪山茶花、姫椿などの呼び名があります。歌では童謡の「たきび」に登場することでも有名です。花言葉は「困難に打ち勝つ、ひたむきさ」(白)「愛嬌、理想の恋(桃・赤)「理性、謙遜、謙譲」。11月3日、 12月4日の誕生花です。