秋色に染り始めた房総の山間で、一際朱色に染まるカラスウリを見つけました。
季節というものは国が違えば風土もがらりと変わり、その土地の動植物 を見れば季節の流れを知ることができます。冬を目前にした房総の山間でも、今まさに季節の移り変わりを目の当たりにすることがきます。言葉では表現するこ とのできない色彩豊かなこの季節、心から楽しんでみたいものです。房総の魚介も冬支度に入りより一層旨味を増しています。
カラスウリ(烏瓜、唐朱瓜、学名:Trichosanthes cucumeroides)
ウリ科カラスウリ属、つる性の多年草。日本では本州から九州・琉球諸島までの林や藪の草木に絡みつき自生し、開花期は 7月~9月の夏にかけ花を咲かせます。この花は日暮れから咲き始め未明には萎んでしまうためあまり見ることのない花でもあります。花弁は白色で5弁に分か れ先端からは無数の白い糸のようなものがレース状に広がっているのが特徴で、このような特異な形状をしているのには理由があり、大型の蛾を飛来させ受粉の 役割を果させるのが目的です。スズメ蛾のように大型の長い口吻を持った蛾だけが花の蜜を吸えるように花筒が非常に長く、この蜜吸うときに雄しべや雌しべが 顔に付着し受粉される仕組みとなっています。そして秋も深る10月~11月下旬頃、雌花の咲く雌株にのみ卵型をした朱色またはオレンジ色をした果実が実 り、この果実の中には黄色果肉にくるまれるようにして種子があります。この種子は黒褐色でカマキリの頭部によく似た形状をし、また打ち出の小槌にも喩えら れ財布の中に入れておくと富に通じるとされ縁起物として扱われています。この種子をくるんでいる黄色い果肉は食べるととても苦いため食用には適しません。 そして地上に延びていた蔓は秋になると地面に向かって延び、地面に触れたところから根を出し新しい塊根を形成し栄養繁殖を行います。また、葉はハート型を し表面は短い毛で覆われ触れるとふわふわザラザラとした感触が特徴です。冬は地下のデンプンを多く含んだ魂根で越冬をします。カラスウリの名の由来は、朱 墨の原料で「辰砂(しんしゃ)」の鮮やかな「緋色(ひいろ)」に実の色がにていることから「唐朱瓜(からしゅうり)」と呼ばれました。カラスが好む、好ま ないなどの意味ではないようです。また、古くから果実は別名「玉章(たまずさ)」と呼ばれています。
花言葉は、「誠実、よき便り、男嫌い」です。